「高齢者を守る会」会長 ジョン金井
-使命を終えたサクラICF- サクラICFの
閉鎖が表面化したのは、サクラICFを所有するパシフィカ社が、Los Angeles Department of City Planning(L.A.都市計画局)へICFの建物をアパートに改築し、ゲートボー ル用の敷地にアパートを新築する計画の許可を申請したことが発端となった。2020年8 月13日のことである。 この事実を初めて見つけ問題視したのは、ボイルハイツ地域評議会だった。この事に 危機感を持ったボイルハイツ地域評議会は、至急彼らの月例会においてこの事を取り上 げた。そして彼らは、この月例会をZoom を通しての一般公開とした。つまり、発言者 と聴衆を一般から募ったのだった。 同じくこの事の重大性を認識した「高齢者を守る会」は、この催しを通して、日系社 会の声を代弁できるよう準備を整えた。「高齢者を守る会」の前身「敬老を守る会」の 当時から我々の草の根運動を応援してくださる連邦下院議員Maxine Waters 氏は、平日 の夜10時過ぎ(ワシントン時間)にも関わらず、我々の要請を快く引き受けてくだ さった。 我々の要請を引き受けてくださった10数名の方が次々にパシフィカ社の計画に反対 する由を述べ、改築・新築案を説明するためにその場に出席したパシフィカ社の職員に 少なくないインパクトを与えることが出来た。その後、多くの日系団体と日系リー ダー、そしてローカルの政治家の方々による反対意見が日系新聞などを通して公にされ た。 そのことが功を奏したのか、サクラICF の改築・新築計画の動きは少々下火になった かに見えた。だが、そのような事であっさり諦めるパシフィカ社ではない。なんと言っ ても、彼らは営利のみを追求する企業である。
-弁護士団と契約-
サクラICFが閉鎖となると、居住者の方々は長年住み慣れた場を奪われ行き場が無く なる。これだけは何としても阻止しなければならなかった。それと同時に、我々が対処 1 しなければならない案件があった。州司法省より敬老とパシフィカ社へ課された5年間 の売却条件の延長を求めることである。 たまたまその頃、我々の草の根運動を法律的に代行してくださる無報酬の法律事務所 が見つかった。我々が進める施設再建のためのタスクフォースに属するメンバーの一人 が紹介してくださったのである。全国規模の法律事務所だった。 そしてこれもたまたまだが、我々のケースを担当して下さるのは、日系の前田弁護士 だった。これに勝るシナリオはない。契約を結んだのは、去年(2020年)の8月26日 だった。 さっそく前田弁護士率いる弁護士団と会合を持ち、我々「高齢者を守る会」が進める 色々な案件の中で何を優先するかを話し合った。そして、“行き場のなくなるサクラ ICF の居住者を守る” “Covid-19により、死と向かい合わせになっているケイアイ介護施設の 居住者を守る” “売却条件の延長”を優先することに意見が一致した。 我が弁護士団は、さっそくパシフィカ社へ売却条件の延長を求める書簡を送った。昨 年9月の話である。書簡には、コロナが収拾し日本文化に基づいた施設へ居住者が安心 して移動できるまで、ICFの運営を続けるという要求が盛り込まれた。 また、Covid-19により大きく揺れるケイアイ介護施設を最低2年間、あるいは Covid-19 による州の非常事態が収拾するまでの間、そのどちらか長い期間の売却条件の延長を明 記した。だがパシフィカ社からは、一言の返事も戻ってこなかった。 弁護士団は、売却条件の延長を州司法省へも要請した。そうしたところ、州司法省か ら返事があった。この売買の当事者である売り手の敬老、または買い手のパシフィカ社 からの売却条件の延長要請がない限り州司法省としては動けないということだった。上 に書き記したように、パシフィカ社からの返事はなかった。すると、残るは敬老だけで ある。
-売却条件の延長を敬老へ求める書簡-
弁護士団と「高齢者を守る会」は共同で敬老への書簡を作成し、次のような内容を盛 り込んだ。
売却条件の修正および延長を州司法省に対して要求できるのは、敬老理事会だけであ ると前置きし、1)新型コロナによる被害の甚だしいケイアイ介護施設を最低2年間、 あるいは新型コロナによる州の非常事態が収拾するまでの間、そのどちらか長い期間の 売却条件の修正および延長が必須である。2)パシフィカ社が日本文化に基づき、手頃 な値段の、そしてコロナウィルスの伝染を恐れる必要のない場所を見つけるまで、サク ラICFの閉鎖を妥当な期間延ばすことを要請した。 そして、“敬老だけが行使できるこの簡単な行動を通して、あなた方はICF を守ること ができ、敬老を信じて敬老を慕って入居された方々を「路頭に迷う」ことから救済する ことができるのです。 私共は、この危急の事態に際して、あなた方が最大限の配慮を施してくださるよう謹 んでお願いいたします。敬老を信じ、敬老を慕って入居された方々を見捨てないでくだ さい”と書き記して締めくくった。
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