top of page

高齢者のコロナウィルス予防

更新日:2022年3月17日

入江 健二(元リトル東京開業医)

「年寄りをいたぶるコロナ嫌なヤツ」 三月の羅新川柳課題は「と」で始まる句でしたので、こんなのを作りました。

実感です。


 コロナウィルスが猛威を振るっています。イタリアの状況などは悲惨です。また、発生地の中国に近い日本より、ここアメリカで爆発感染が起こっています(四月七日現在で米国の感染者総数三九万九千人、死者一万二九〇〇人- 死亡率三%)。そんな中で、後期高齢者は罹りやすく、重篤化しやすいことも知れ渡っています。恐ろしいことです。


 しかし、負けてはいられません。罹らぬための予防が大切です。まず、人類共通の敵、コロナウィルスの基礎知識から入りたいと思います(冗長とならぬよう、箇条書きを中心に進めます)。

①ウィルスとは

 最小単位の微生物で、地球上すべての生命の起源はウイルスと考えられています。


②コロナウィルスとは

 一般にコロナウィルスと呼ばれるものには、実は七種類あって、その一つが昨年中国武漢市で発生したと伝えられる新型コロナウィルスCO VID - 1 9 (またはSARS - CoV2 )です。七種のうち四種は一般のカゼの原因で、多くは軽症。他の二種は、二〇〇二年「重症急性呼吸器症候群(SARS )と二〇一二年「中東呼吸器症候群(MERS )の原因です。


➂感染経路

 新型コロナウィルスがそもそも、どこから人間へ伝播したかは確定していないようですが、その遺伝子構成がコウモリの持っているウィルスのそれに酷似しているため、コウモリ説が最も強く信じられています。


 人から人への感染経路は、二つ。(1)飛沫感染感染者のくしゃみ、セキ、つばに混じってウィルスが飛び出し、それを他者が吸い込む(2)接触感染感染者の手から他者へ。感染者からの飛沫が付着した物(ドアノブ、手すり、電気器具のスイッチなど)に他者が触れ。その手指を口や鼻腔に入れる。


④潜伏期

 個人差が大きく、現在のところ一日から十四日とバラつきあり。平均約五日間(WHOの見解)。従って、感染の疑われた人は、無症状でも十四日間の安静と観察が必要。


⑤感染しやすい人

 六五歳以上の高齢者、糖尿病のある人、心臓・肺・腎臓に慢性疾患のある人(特に腎透析者・慢性心不全患者・肺繊維症患者など)、妊婦、抗がん剤や免疫抑制剤(抗リウマチ薬など)を使用中の人、など。


⑥症状

 (1)華氏一〇〇度以上(日本では摂氏三七・五度以上と規定)の発熱(2)強い倦怠感の持続(3)セキを伴う呼吸困難(息苦しさ)これらが三大徴候。しかし三つが出揃わくても、熱や倦怠感が二日以上継続すれば警戒心を高めるべき。


⑦診断

 確定診断は、鼻汁、痰、またはノドや口腔内の分泌物を用いてのPCR検査(Polymerase Chain Reaction T est) によります。これは、ウィルスの細胞内活性を見るテスト。感染した結果として抵抗性を獲得したか否かは、血液中に新型コロナウィルスへの抗体が既に存在しているかを調べて判定します。


⑧予防法

 いよいよ予防についてです。基本的には、一般のカゼ予防(フルー対策)と少しも変わりません。肝腎なのは、それをいかにシツコク徹底的に行なうか、という点に尽きます。

 (1)手洗いと手指の消毒外出先でのできるだけ頻繁な手洗いと帰宅後の石けんによる丁寧な手洗い。手指消毒には、市販の消毒用七〇%アルコールが有効。手指を口や鼻腔に入れない注意も必要。

 (2)外出はなるべく避け、やむをえず外出する際はマスクを着用。できれば、鼻・口の周辺を密閉する形式のものを使用。自作の布製マスクを使用する場合、複数作っておき、使

用して帰宅した後すぐに煮沸消毒を(コロナウィルスは摂氏七〇度以上で死滅)。

 (3)外出しても人込みをなるべく回避。家庭内でも、互いの距離をなるべく保つこと(こ

ちらでは六フィート超の間隔、日本では二メートル超の間隔が推奨されている)。望ましい距離を保てない場合(例・食事中)、その時間をできるだけ短縮。

 (4)日本では、「三つの密」を避けることが提唱されています。密閉空間(密室)・密集

(多人数の集合)・密接(握手、抱擁、キスなど)の三つです。この提唱には、集団感染予防の意図が込められています。

 (5)ゴム手袋一般には推奨されていません。しかし、マーケットなどの買い物先で商品にコロナウィルスが付着している可能性は常にあります。医療用ゴム手袋はウィルスの進入

を遮断します。食器洗い用のゴム手も可。帰宅後は捨てるか、石けんで洗浄。


⑨治療

 新型コロナウィルス(CO VID - 1 9 )に特定の治療薬はまだ、開発されていません。ワクチンもまだです(四月十一日現在)。毎年流行するインフルエンザに対してと同じく、熱やセキへの対症療法、安静、ウガイ、痰を出すこと(喀痰)、水分の補給、ビタミンCの摂取などが中心となります。入院者には、タミフルー(Tamiflu 物質名Oseltamivir )をはじめ、他のヴィルス疾患に有効とされる薬物が種々試されます。細菌による二次感染予防として抗生剤の静脈注射も行なわれます。肺炎による呼吸困難には、ネブライザーなどの呼吸療法が実施され、重篤となればICU(集中治療室)でレスピレーター(呼吸器)による人工呼吸が施行されます。


 アビガンという薬品が、日本の安倍首相からアメリカのトランプ大統領へ推薦されて話題になっています。この薬(A vigan 、物質名Favipiravir 富士フィルム富山化学の製品)は、ウィルスが人の細胞の中で増殖するのに必要な酵素RNAポリメラーゼ(Polymerase )の活性を阻害する物質です。四月二日の共同通信によれば、新型コロナウィルスに有効かは、日本でも臨床試験中とのことです。


⓾では、具合が悪くなったら?

 熱・倦怠・セキなどで具合が悪くなった場合、間を置かずに行動するべきです。(1)受持ち医に相談し、必要なら感染症専門医へ即刻回してもらう(2)近くの緊急治療室(Urgent Care)に問い合わせて、PCR検査の機能を備えているなら行く(3)大病院のER(救急室)へ駆けつる、などの対策が考えられます。三大徴候に加えて胸痛・意識混濁・口唇や顔面の青や紫への変色(チアノーゼ)が生じるなら、迷わずERへ(この際「人へうつさず、貰わず」のためマスク・手袋・帽子等の装備が必要̶ 同伴の家族や友人も)。


 以上ここに述べたことは、対策の骨組みだけです。舌足らずをお詫びします。一つ加えるなら、誰でもそうですが特に高齢者は(私を含め!)普段からの健康増進が大事です。栄養・充分な睡眠・そして適度な運動が必要です。これらのバランスが崩れると、免疫抵抗力が低下し、発病しやすく重篤化しやすくなります。


 頑張りましょう。


(この記事は、南カリフォルニア庭園業連盟機関誌「ガーデナの友」のために書かれたものです。同誌の許可を得て本紙へ転載)

閲覧数:22回0件のコメント

最新記事

すべて表示
bottom of page